僕はいかにして Windows Phone を見捨てたか
こんにちは。この記事は、
Windows Phone Advent Calendar 2014 - Adventar
の 21 日目の記事です。
注意: 記事タイトルから分かる通り、 Windows Phoneを褒める記事では決してございません。
僕はいかにしてWindows Phoneを見捨てたか
,, _ / ` 、 / (_ノL_) ヽ / ´・ ・` l Windows Phoneは死んだんだ (l し l) いくら呼んでも帰っては来ないんだ . l __ l もうあの時間は終わって、君も人生と向き合う時なんだ > 、 _ ィ /  ̄ ヽ / | iヽ |\| |/| | ||/\/\/\/| |
この記事は、僕から見て Windows Phone とは何だったのか、という総括の記事です。
Windows Phoneとの出会い
Windows (R) Phone(ウィンドウズフォン) IS12T | 製品アーカイブ | au
僕が一番最初に触った Windows Phone 端末は TOSHIBA IS12T でした。
IS12Tが出た頃は、iOSとAndroidのシェア争いが今以上に苛烈であり、まだ第三極への期待も持てる時期だったと記憶しています。その時期に颯爽と現れたIS12T、Windows Phone には、贔屓目なのは否めませんが、善戦を期待していました。
僕は当時まだ iPhone を所持していませんでしたが、Android 端末は所持していました。確か 2.3 だったと思います。当然の流れとして Android 版のTwitterクライアントを作成しようとしていました。UIの設計まで行ったところで、Android アプリケーション開発におけるAPI群の設計のあまりのクソさに、これはUIを実現できないと考えアプリケーション開発を投げ出しました。
そこに C# でアプリケーションが書ける端末が来たわけですから、当然こちらでそのUIが実現できないか検討を行いますよね。XAMLプラットフォームにある程度慣れていたおかげか、予定していたタイムラインのUIはほぼ実現できそうだ、ということがわかりました。
ちなみに当時、Microsoft自身がWindows Phone端末を大盤振る舞いしていまして、アプリケーションを3本*1書けば端末を1つくれる、というようなことをしていました。これを利用して、本題であるTwitterクライアントを作る前に、まずは小さなアプリケーションを3つ書き上げ、端末をゲットしました。
そこからようやく、Twitterクライアントの開発に本格的に取り掛かりました。手に入れた端末で実機テストを行えたのが、完成度を高めるという面でプラスに働いたのは言うまでもありません。
Krile for Windows Phone
端末を手に入れた後、Windows Phone上でのTwitterクライアントを作成する作業に着手しました。Androidで実現できなかったUIをすべて盛り込むことが、Windows Phoneならできるだろうという根拠の無い自信がありました。
その結果として、Krile for Windows Phone が完成しました。
Krile for WP | Windows Phone アプリ + ゲームストア (日本)
滑り出しは上々でした。様々なブログやWebサイトでKrile for Windows Phone を取り上げていただきました。事実上開発が終了した現在でも愛用頂いている方がいらっしゃるようで、開発者冥利に尽きると考えております。
ちなみに、Krile for WPは、日本でWindows Phoneを利用するユーザの少なさを鑑み、あえて日本語対応を行っていません。XAML Appを多言語化する方法も様々に割れていた時期でもありましたし、開発の初期段階であったため、リソースの準備漏れなどを防ぐためにあえて英語のみでリリースを行いました。
リリース後、いくつか問題も出てきましたが、その中には開発者側ではどうしようもないものもありました。ですが、こういったプラットフォームに起因する多少の不出来・制限は、Windows Phoneのバージョンアップなどで解消していくだろうと考えていました。
IS12Tの故障と iPhone4S
さて、先述の通り、私のIS12TはMicrosoftさんから頂いたものなのですが、SIMカードが付属していません。しかも当時、私はdocomoと契約していましたから、KDDI回線を持っていませんでした。当時はまだキャッシュバック攻勢が全盛期だった時代でしたから、SBのプリペイド携帯を踏み台に、MNP一括ゼロ円で月々サポートが多く乗る端末を探して購入し、そのSIMカードを流用することにしました。
そこで手に入れたのが iPhone4S でした。世間はそろそろiPhone5が出るだろうという時期でしたので、かなり投げ売り状態でした。
そんな経緯でゲットした iPhone4S だったので、しばらくはSIMをWindows Phoneに取られて端末自体は箱の中という状態が続きました。そんな最中、IS12Tが故障しました。
microUSBポートが物理的に故障したようで、通信も充電も行えない状態となりました。アプリケーション開発もできないので、当然修理となりました。修理期間は2週間もかからなかったと思いますが、その間はSIMをiPhone4Sに刺して使っていました。
iPhoneの衝撃
なんだ、これは。というのが一番の感想でした。実は、iPod touchを長いこと利用していたので、iOSを充分に理解していたつもりでした。それを考慮しても、SIMが刺さるだけでこんなにも便利になるものか、という驚きがありました。
ほどなくしてWindows Phoneが帰って来ましたが、SIMはそれ以降iPhone 4Sに刺さりっぱなしとなりました。そうして Windows Phone は Wi-Fi運用のみとなりましたが、端末の場所がポケットからかばんの中となり、そしてついに、家の片隅に置き忘れられるようになりました。
Windows Phone 8
それでも、Windows Phone がいつか何か巻き返してくれるのではないかという淡い期待は捨てませんでした。しかし、IS12Tに降ってきたのは Windows Phone 7.8 まででした。日本のWindows Phoneの歴史は、ここで途絶えています。
後に Windows Phone 8端末もご好意により手に入れることができましたが、もはやそこに煌めく物は何も残ってはいませんでした。真っ赤な Lumia は机の横の小物入れの中で、バッテリ切れの状態で今も眠り続けています。
何が2つを分けたのか
何もかもが違いました。アプリケーションを利用する際の様々な動作についてまわる快適さも、アプリケーション自体の選択肢も、そしてそれらの完成度も、どれも Windows Phone にはないものでした。iPhoneに無いものといえば、カーブフリックくらいでしょうか。
何より、アプリケーションの「選択肢」の多さは圧倒的でした。Windows Phoneはアプリケーションがあるにはあるのですが、選択肢がないというのが日常的にありました。この機能を、このサービスを利用するならこのアプリケーションしかない、このアプリケーションかこのアプリケーションしかない、というのが非常に多かったと思います。しかし、iPhoneなら、多機能に振ったアプリケーションから、単機能に振ったアプリケーションまで幅広く準備されていました。
このアプリケーションの多さは、おそらくアプリケーションのAPIにも起因しているのでしょう。Windows PhoneのAPIは確かにアプリケーションを書くためには充分な量が揃っていますが、一部でかゆいところに手が届かなかったり、OSの制限で実装できない機能があったりしました。
なんにせよ、OS自体の完成度という点で、アプリケーションの完成度という点で、アプリケーションの選択肢という点で、Windows Phoneは完全に敗北していました。
そして、この大きな差は、今に至るまで埋まることはありません。むしろさらに広がり、2つのスマートフォンOSの勝者たちとの絶望的な隔たりとなって、存在しています。
Windows Phone の今後
皆さんはもうお気づきだとは思いますが、日本でWindows Phoneが盛り返す可能性は皆無です。そもそも、端末がリリースされる可能性すら非常に薄いです。
端末がなければ事実上、アプリケーションを開発することはできません。アプリケーションがないので、端末をリリースしても売れませんから、端末はリリースされません。
そんな端末に、そんなスマートフォンOSに、誰が期待するでしょうか。
まとめに代えて
Windows Phone エコシステムは、少なくとも日本においては、完全に死滅しました。
しかし、一度は愛したスマートフォンOSです。
願わくば、世界のどこか片隅にでも、ひっそりと生き延びてほしいものです。
*1:確か3本だった気がしますが、定かではありません